鬼嫁は信濃町で同窓会、ボクは新宿のペンタックスフォーラムに出かけるというので、二人で家を出た。一緒に電車に乗るなんて一般家庭では日常茶飯事だろうが、我が家ではきわめて珍しい出来事である。たまたま二人の一日のスケジュールが、同じ時間に家を出るということで一致したわけだ。車で出かけるときは、ボクは運転に集中しなければならないという名目が立つから、鬼嫁の話はさらっと聞き流していればいい。真剣に相槌を打つなんてことをしなくても、波風は立たないわけだ。ところが、電車だとそうもいかん。ご近所の噂話やら、なんとか美奈子という芸能人が白血病で死んだ話やら、ボクの脳味噌の中にまったく位置を占めていない異次元の話が延々と続き、生返事なんかしようものなら、「あなた、聞いてるの!」と叱られる。御茶ノ水までの1時間がまるで拷問みたいだった。 アート・ウルフ展は、やっぱりもう一度見に来てよかったと思った。大判カメラで捉えられた辺境の風景1枚1枚に、撮影に際しての彼の計算や「読み」が完璧に表現されている。「この1枚を撮るために、彼はおそらく、この場所に1ヶ月は留まったに違いない」というような、写真家でなければ感じられない臨場感がひしひしと感じられるのだ。彼の写真展が日本で開かれるなんてことは、ボクが生きている間はもうないだろうから、できれば開催中にもう一回見に行こうと思っている。 淡路町にある弱小出版社でちょっとした打ち合わせがあったので、新宿から御茶ノ水に戻った。土曜日の、だれもいないオフィスで編集長さんが一人で仕事をしている。そこにのこのこと現れたのだから、格好の餌食である。まっ昼間からビールがどんどん空になり、夕方にはへろへろに出来上がってしまった。肝心の打ち合わせを全然やっていなかったことに気づいたのは、御茶ノ水の駅にたどり着いたときだった。まったく、なにをしに行ったんだか。 【使えるワザ】 秋の日はつるべ落としと言うけれど、ほんと、まだ4時にもなっていないのに夕方である。お茶の水は高台になっているので割と見通しがいいのだが、お陰で陽が当たっている遠景と、すでに陽が沈んでいる近景との明暗差が大きく、写真にするには苦労するシチュエーションだ。この写真の場合は、特に陽が当たっていない部分がメインなので、露出設定はその部分の描写に力点を置くわけだが、遠景が飛んでしまっては絵にならないから、そのぎりぎりのところを見つけるのが難しい。もちろん、デジカメのラチチュードに収まりきれないことは承知だから、レタッチを念頭に置いて露出を決めている。 レタッチでは、遠景部分の明度を下げ、撮影時にアンダーを承知で写してあった近景部分の明度を上げてある。明暗差を縮めているわけだ。やりすぎると現実感がなくなるので無茶はできない。ほんのわずかの調整しかできないことを前提に写しておくべき風景である。 カメラ CANON EOS20D Tamron 28-300mm Macro 撮影日 05/11/12 15:30 ISO感度 400 絞り F8.0 シャッター 1/320 露出補正値 -1.0 WB 自動 露光方式 絞り優先AE 測光方式 評価測光 合焦方式 スポットAF 焦点距離 39mm (35mm換算 62mm) その他 手持ち撮影 レタッチソフト ちびスナ PhotoShop EL
by osampodigicame001
| 2005-11-13 00:12
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